カットテール

釣りがどうでもよくなった。

あんなに好きだったのに。寝ても覚めても考えていたのに。ずっと一緒にいるもんだと思っていたのに。

まるで恋愛のそれのような想いを、釣りにも抱いていた。

すーっと感情が消えていく。

これもまた恋愛のそれのように。

国内外のオークションサイトにかじりつき、探し回って手に入れた道具。

子供の頃は欲しくても手に入れられず、大人になって出会えた道具。

親父に買ってもらった思い出の道具。

全部手放してしまいたくなるほど。

それほどにどうでもよくなっていた。

これもまた恋の終わりのよう。別れたひととの思い出の品も、気持ちがなくなればただのモノだ。

全部リセット。また違う世界を生きよう。思い出やモノに縛られず、全部やり直そう。そう思ったりもした。

しかし。

やり直す?なにをやり直すんだ?バス釣りをか?冷めちまったんだろ?と、すぐにサメタ自分が自分を笑う。

それほどまでに。それほどまでにどうでもよくなってしまっていた。

そんなことより。

そんなことより何よりもどうでもいいのは、そんな「お前の事情」だ。

やめたきゃやめろ、ただそれだけの話なのに、何をたらたら綴っているのか。

どうでもよすぎて反吐が出る。

そんなことより問題なのが。

釣りをやめるやめないをあーだこーだ考えていた、ワームのセットも綺麗にできない人間が、絶滅したとさえ言われるブラックバスをまた釣りに行こうと思い立ち、思い立ったら思い立ったですぐに釣ってしまったことが問題なのだ。

その何が問題なのか。

ブラックバスという外来魚がいるということが問題なのではない。

ゲーリーヤマモトという日系人が作るマテリアルが、そしてそのマテリアルでできたカットテールというソフトプラスチックが、ただ投げるだけでブラックバスの口を使わせるということ。それが問題なのだ。

「バス釣りでもいくか」

まだ学生だった頃、旧友と思い出を巡るように釣具屋へ、そして川辺へ向かった。

この川でヤンキーに絡まれたよな、とかいう昔話をしながら針先にセットしていたもの。

そして子供の頃に夢見たあの魚ーブラックバスーをその日大人になって初めて触らせてくれたもの。

そう、それも全てカットテールだったのだ。

バス釣りでもいくか。

そう思ったら。

久しぶりにバス釣りをしようと思ったら。

カットテールをまたポケットに忍ばせるんだろう。

自分と釣りをつなぐもの。

それがカットテールだって、気づいた35歳は今日もまたブログを書き、少ない広告収入で食べるラーメンを想うのだ。

 

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